哲学日記

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zoom RSS 『信のたわむれ』 《さようなら》

<<   作成日時 : 2005/11/04 07:06   >>

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第六章 さようなら

 まことの覚者久松真一とまことの信仰者滝沢克巳の対決は、思いもよらず宗教とはかなりかけ離れたまったく別の世界の議論を展開させてくれた。ミヒャエル・エンデではないが私がこの《たわむれ》を開始したとき、まさかこのような形でその展開を終了するとは思ってもいなかった。そこで、私はこのディスクールに登場していただいた主な主役たちに感謝の言葉を返しながら皆さんともお別れしたいと思う。

「久松先生、ありがとうございました。たぶん、あなたは私のこの《たわむれ》に対してこう言うでしょう。『お若い方、あなたはわしについて真実を語らなかった。また、《宇宙》の《根源》についても、《生命》の《起源》についても、《言語》の《本質》についても、《死》そのものについても、何も真実を語らなかった。じゃが、それもいいだろう。《真実》はそもそも語るものではないのだからな。《真実》とは《それ》を《生きる》ことなのじゃからな。ハハハおまえはしきりに《非ロゴス》の《ロゴス化》を強調しておったが、《非ロゴス》の《ロゴス化》とは、あのナザレのイエスの大工が《生き》、そして《死んで》いったそのすべて、その《生涯》そのものを意味するのじゃ。あとは何もない。聖書も、教会も、教義も、教えも、復活も何もない。あったのは、彼が《生まれ》、《生き》、そして《死んで》いった、そのことだけである。しかし、そこには《すべて》が含まれている。その《すべて》とは何か、これをおまえの《宿題》にしよう』……」

「滝沢先生、ありがとうございました。私は先生の立場を十分擁護できなかったことを申し訳なく思っています。けれど、先生はわたしのどの《たわむれ》にも反論ひとつしないで黙ってきいてくれました。私は先生がご自身の立場を一切変えないことを知っています。それでいて、ご自身以外のすべての立場に立つ人間がどのような根拠に立っているか極めて鋭く洞察していることも知っています。ですから、私のこの《たわむれ》がどの程度のものかすべて察しがついていることと思います。私は《たわむれ》のために《たわむれ》ました。この《たわむれ》はそれ自身は意味をもっていません。もしこの《たわむれ》が何らかの意味をもつとしたら、久松先生ではないけれど、実際の人生で自分が《どのように》生きたか…ということでしょう。そういう意味で私は先生がどのような《著作》を残されたかということより、先生が実際に《どのように》生きたかということを手本にしてゆきたいと思っています」

「八木先生、田川先生ありがとうございました。私は両先生の思想について十分正しく紹介できなかったのではないか…と危惧しております。というのも、あまりにも表層的な部分しかとりあげなかったからです。しかし、私はすでにこの《たわむれ》を書いてしまいました。《たわむれ》てしまいました。ですから、その責任は現実の自分の人生で背負ってゆくつもりです。それはこれから私が何をどのように書くかということとはまったく異なります。しかし、不思議ですね、何かものを書くということは犯罪者が《調書》を書かされているようなそんな感じです。ですから、両先生について十分な真実を書かなかった罪としてこのディスクールそのものが《調書》になっているのですね。いずれにしても、両先生が著した一連の著作から多くのことを学ばせていただきました。にも拘わらず、このような不十分な形でしか両先生を紹介できなかったことを繰返しお詫び申しあげます」

「最後に、つまらないたわごとに最後までつき合ってくださった読者である《あなた》にあらためて感謝します。途中ずいぶん説教じみた文体になってしまったことをお詫びします。それは、私の中にあって、絶対に私でない《それ》が私を強制させるのです。この本は批判の本ではありません。人工知能学者、分子生物学者、教育者、教師、思想家、哲学者、医師、精神科医師、カウンセラー、看護婦、臨床家、精神療養家、心理学者、作家、芸術家、弁護士、裁判官、政府首脳、企業のトップ、あるいは、うつ病や分裂病で悩んでいる方々、自閉症や心身症などで苦しんでいる人々、あるいはニートとして《こころ》の充電を実施している方々、それら《対話》が必要なすべてのひとを対象に、それらの人々が《現代問題》の最も複雑困難な諸事象にどのように取り組んでいったらよいのか、一緒に考えたかったからなのです。そこで、とりあえず《対話》とは何か? 《対話》を成立させている《それ》とは何か? なぜ日本人は《対話》がへたなのか? そのようなことからはじまって、自分自身との《対話》ができるひとだけが本来の意味での《対話》ができる…ということをハイデッガーの『ヘラクレイトス』で学んだことを皆さんに紹介したかったのです。わたし自身どれだけ《対話》ができる人間なのかよくわかりませんが、できるだけ《対話》ができるようになりたいと思っています。それぞれ、皆さんおひとりおひとりに何かヒントでもあれば幸いに思っております……」


       決シテ没スルコトノナイ者ヲ前ニシテ、
       ヒトハドウ身ヲクラマスコトガ出来ルトイウノダ

                     ---- 断片 16 ----




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『信のたわむれ』 目次一覧
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第一章 対話すること
一 語ること と 沈黙すること
二 情熱のウロボロス
三 《覚》の徹底化  
四 信じること と 喰うこと (前半)  
四 信じること と 喰うこと (後半) 
五 幻想としての宗教  (前半)
五 幻想としての宗教  (後半)
第二章 分裂病者との対話
一 分裂病者とキリスト教者
二 分裂病者と覚者 (前半)
二 分裂病者と覚者 (後半)
三 分裂病者と天才)
第三章 ことば・こころ・もの
一 ことばの世界(キリスト教世界)
二 こころの世界(仏教世界)
三 ものの世界(無神論世界):前半
三 ものの世界(無神論世界):後半
第四章 ロゴス・反ロゴス・非ロゴス
一 ロゴス空間:前半
一 ロゴス空間:後半
二 反 ロゴス空間:前半
二 反 ロゴス空間:後半
三 非ロゴス空間:前半
三 非ロゴス空間:後半
第五章 衰弱する言語
一 丸山圭三郎(ソシュールの思想)
二 デカルト批判の批判
三 現代の科学者たち
第六章 さよなら

あとがき
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関連作品:
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■ 『拝啓 小学生の皆さんへ』
■ 『拝啓 頭のおかしいおじさんへ』
■ 『インターネットで見た光景』
■ 『Ωの輝き』
■ 『知のたわむれ』
■ 『覚のたわむれ』
■ 『現代のたわむれ』
■ 『異常なる感性』

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関連記事:
『Ωの輝き』 《解説(その1)』
『モツニ哲学者、自らを語る(その1)』
「産経新聞はアホや」について
「産経新聞はアホや」(つづき)

『一即一切』について
『色即是空』について
「価値なき神」の哲学日記 bQ09について
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参考文献:

『ヘラクレイトス』        ハイデッガー全集 55巻
『仏教とキリスト教』       滝沢克巳;法蔵館
『続 仏教とキリスト教》     滝沢克巳;法蔵館
『仏教とキリスト教の接点』    八木誠一;法蔵館
『久松真一著作集』        久松真一;法蔵館
『滝沢克巳著作集』        滝沢克巳;法蔵館
『人生の帰趣』          山崎弁榮;光明会編

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『マルコ福音書 上巻』      田川建三;新教出版社
『イエスという男』        田川建三;三一書房
『立ちつくす思想』        田川建三;勁草書房
『歴史的類比の思想』       田川建三;勁草書房
『批判的主体の形成』       田川建三;三一書房
『宗教とは何か』         田川建三;大和書房

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『言葉と物』           M・フーコー;新潮社 
『ソシュールの思想』       丸山圭三郎;岩波書店
『ソシュールを読む』       丸山圭三郎;岩波セミナーブックス
『沈黙するソシュール』      前田英樹; 
『偶然と必然』          J・モノー;みずず書房
『善悪の彼岸』          ニーチェ;岩波文庫
『道徳の系譜』          ニーチェ;岩波文庫

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『精神分裂病 上下』       ビンスワンガー;みすず書房
『精神分裂病』          ミンコフスキー;みすず書房
『生きられる時間 上下』     ミンコフスキー;みすず書房
『現象学的人間学』        ビンスワンガー;みすず書房
『内的時間の現象学』       フッサール;みすず書房
『自己・あいだ・時間』      木村敏;弘文堂

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『ゲーデル・エッシャ・バッハ』  ダグラス・ホフスタッター;白楊社
『意識する心』          デビッド・チャーマーズ;白楊社
『解明された意識』        ダニエル・デネット;青土社
『ダーウィンの危険な思想』    ダニエル・デネット;青土社
『皇帝のあたらしい心』      ロジャー・ペンローズ;みすず書房 
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『集合と位相T』    彌永昌吉、彌永健一;岩波講座 基礎数学
『集合と位相U』    彌永昌吉、彌永健一;岩波講座 基礎数学
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『フロイド選集 (全17巻)』  フロイト;日本教文社;
特に 「自我論」、「文化論」、「芸術論」、「幻想の未来」 

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