哲学日記

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zoom RSS 『拝啓 小学生の皆さんへ』 16-20

<<   作成日時 : 2005/09/27 21:35   >>

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《 こころの発達 》

 私は《いじめ》問題だけを皆さんと一緒に考えるためにこの手紙を書いたわけではありません。まえにも書きましたが、私の姉は精神薄弱者です。けれど、そのことでいろいろな素晴らしい経験をしましたし、それより、子供のころから人生や人間について非常に深く考えるようになりました。その具体的な内容はわたくしの小説『異常なる感性』のなかで詳しく書いていますので、いつか皆さんが大人になったときぜひ読んでみてください。とにかく、姉が精神薄弱であるというそのことのお蔭で、私は子供のころから〈こころ〉あるいは〈人間〉についてほんとうにいろいろ哲学してきました。受験勉強ももちろん少しはしました。けれど、どちらかといえば私の子ども時代は”人間はどうして気晴らしばかり求めて、人生そのものを真剣に考えないのだろうか…”ということをいつも考えていました。

 さて、これまで《いじめ》の問題を中心に議論してきました。しかし、実は今、いじめの問題に直面しているみなさんだけでなく、地球全体が〈こころ〉の病気にかかっているのです! どうしてそういうことになってしまったかと言いますと、いつごろかははっきり言えませんが、汽車や電車ができ、電話がひかれ、ラジオやテレビができ、飛行機が飛ぶようになってから急にそのようになってしまったのです。それまで、人間は自然を征服しようなどとはあまり考えていませんでした。どちらかといえば、
自然と一緒になって静かに暮らしている方が多かったんです。ところが、技術や産業がどんどん発達すると、そのように自然と一緒に生活する方法とは全然違う生活、つまり、いま私たちが経験しているこのような生活になってしまったのです。

 もちろん、産業や技術が発達するのは悪いことではありません。けれど、人間は技術や産業の発達だけを異常なまでに追い求めたために、宮沢賢治、ミヒャエル・エンデ、ケストナー、ル・グウィンなどたくさんのひとびとが警告してきた〈こころ〉の発達の大切さをどこかに忘れてしまいました。

 はじめは〈こころ〉というものがどれほど大切なものであるのか誰も理解することができないでいました。けれど、心身症、神経症、自閉症、ノイローゼ、うつ病、分裂病などいろいろな精神病にかかるひとびとが増え続け、また、《いじめ》や校内暴力などの社会問題が大きな問題となってきただけでなく、オウム真理教のような問題まで発生して、ようやく〈こころ〉の問題が重要な問題であることに気付いたばかりなのです。

 また、ついこの間の阪神大震災のときのように、人間は体だけでなく〈こころ〉が傷つくということがはっきりしてきたのです。で、みなさん、これはどういうことなのでしょうか? これほどまでに〈こころ〉の問題が深刻になってしまったのは。 今から約100年前、関東大震災がありました。そのときの被害は阪神大震災のときよりもっと凄かったんです。けれど、関東大震災のときは阪神大震災のときとはずいぶん違っていました。それにはいろいろ理由があるのですが、その理由のひとつに、当時のひとびとの〈こころ〉は現在のひとびとの〈こころ〉より強かったことを意味しているのです。

 何も神戸周辺のひとびとの〈こころ〉だけが弱いということではなく、現代のわたくしたちほとんどすべての〈こころ〉がとても弱くなってしまっていることを意味しているのです。オウムの問題にしても、阪神大震災の問題にしても、《いじめ》の問題にしても、すべて〈こころ〉が弱くなってしまったわたしたちひとりひとりの〈こころ〉にこそ問題があるのです。

 ですから、なぜ私たちの〈こころ〉がそれほどまでに急に弱くなってしまったかについて、みなさんと一緒に考えてみたいのです。で、そのまえに、人間のこころの発達にはいくつかの段階があるといわれています。いろいろな考え方があるので、どれが正しくてどれが間違っているか、ここではあまり議論はしません。ただ、大切なことは、生まれてから3才、4才、5才ぐらいまでの最初の段階。それから10才くらいまでの第二段階、そして10才から15、16才くらいまでの最終段階の3つの段階で人間の〈こころ〉の骨組みがだいたいきまってしまうということなんです。

《 こころの骨格形成 》
 こころは脳細胞や筋肉組織あるいは骨格組織などと違って自分だけでは変化することはありません。すべて外からのあるいは内からの刺激(音やひかり)があたえられてその刺激に影響されて反応したり変化したりして〈こころ〉は成長するのです。ふつう、その刺激はことばとして(声あるいは記録された文字として)人間の目や耳に入ってきます。もちろん、小さなこどもにはことばはわかりませんが、ことば以外の雰囲気とかイメージとして無意識的にこどもの脳の中に入ってきます。音だけでなく、ひかりは風景、いろ、かたち、全体の雰囲気としてこどもの〈こころ〉にはいってきます。ここでも、ちいさな子供はまだ文字が読めませんのでことばという刺激はまだ入りこんではいません。そのほか、温度、湿度、感触、圧力、硬さ、軟らかさなど実にさまざまな刺激がこどもの脳内に入ってきます。この生まれてから5才から6才ぐらいまでの期間を〈こころ〉の発達の第1段階つまり《こころの骨格形成》と呼んでいます。

 なぜこの段階が《こころの骨格形成》と呼ばれるかといいますと、人間の基本的な気質、つまり、〈わがまま〉、〈気むずかしや〉、〈内気〉、〈素直〉、〈おっとり〉、〈したたか〉、〈強情〉といった気質がすでにこの段階で決まってしまうということなんです。ですから、この時期に甘やかされて育った人間は、将来おとなになったとき、自分の思いどおりにゆかないとき、分裂病的になったり、独裁者的になったり、おかしな宗教の教祖のようになったりする可能性がとても高くなります。また、この時期に素直に育った人間は、将来よい意味での指導者になったり、他の人間と協力して健全な社会をつくったり、他の人間の幸福について考えることができるような人間になる可能性が大きいのです。

 つまり、勇気ある人間、こころのやさしい人間、自分中心の人間など、おとなになったときの基本的な気質のタイプはすべてこの時期にほとんど決まってしまうということなのです。したがって、いじめをするような人間は、すでにこの時期にそのような傾向が出ている可能性が高いのです。おなじように、いじめられやすい人間の傾向もこの時期に形成された気質が大きく影響しているのです。ちょっとむつかしくなってしまいましたが、すでにこの時期に人間の〈こころ〉の気質のタイプはできあがってしまうということなんです。このことはとくに重要なことですから頭に入れておいてください。

《 こころの成長 》      …………    第二段階
 人間のこころの成長のいつくかの段階を分けたとすると、生まれてすぐから3才ぐらいまでを第一段階、3才から10才ぐらいまでが第二段階、つまり《こころの成長》段階と呼ばれています。この時期は第一段階のからの気質を受け継いで、その気質を発展させながらいろいろな知識や経験を重ねてゆきます。このじきで大切なことは第一段階でたとえば勇気が不足しているようなタイプのこどもがいたとしても、この第二段階でなおせばあ勇気のあるこどもになれることを意味しています。

 おなじように、わがままな子供であってもこの時期になおせばなおるということです。皆さんはこの第二段階にいるわけですから、いろいろな本をよく読み、音楽とか、絵とか、劇などいろいろなものにであうことがたいせつです。また、旅行をして自然にふれたり、スポーツをして汗をながしたり、いろいろなあそびをとおして、ともだちをつくることがとどれだけ大切かしってください。知識はひつようです、でも最低限でいいんです。落第しないていどの知識でいいんです。くりかえします、先生たち、親たち、おとなたちはバカものです。知識はあるかもしれません。でも知恵はありません。勉強、勉強、勉強といってさわいでいる大人はすべて無視してもかまいません。そのような大人こそ、いじめのちょうほんにんなのです。この第二段階でもっとも大切なことは<こころ>をしっかり育てなければならないのです。ですから、いまの教育は完全にまちがっているのです。いま、みなさんにとって最もたいせつなことは知識をつめこむことではなく、知恵をみがくことなのです。そして、その知恵とは<こころ>が十分たくましく成長したとき、そのときはじめてうまれてくるものなのです。ですから、よくあそび、よくまなべなのです。

《 こころの完成 》     ………   最終段階
 十五、六才ぐらいまでが《こころ》の発達の最終段階です。この第三段階は第二段階からの成長をひきうけ、特に言語の能力が飛躍的に発達するとともに、”性”や”異性”の問題、”命”の問題、”死”の問題、”人生”の悩み、特に”恋愛”などの青春の悩み、あるいは”劣等感”の問題など青春の時期に特有なさまざまなコンプレックスに悩まされるのもこの段階の特長です。

 この時期に、受験問題、就職問題、恋愛問題、セックス問題、家庭問題、個人的な劣等感といったさまざまな問題に直面するのは人間が人間として成長していることを意味しているだけでなく、こころの発達という意味では大人への入門試験という意味合いがあるかもしれません。つまり、この時期にいろいろ悩み苦しむのはごく自然のことなのです。逆に、この時期に十分な苦しみや悩みを経験しないで大人になってしまうとするならば、大人になってから同じような悩みや苦しみを経験するようになるのです。

 ですから、このこころの発達の第三段階までにできあがった基本的な人格の骨組みは、そのまま皆さんのおとなとしての人格でもあるわけです。そういう意味で、特にこの時期、いろいろな悩み、苦しみを経験しておくことがとても重要なことなのです。とにかく、10才ぐらいから15,6才ぐらいまでの第三段階までに人間のこころの基本的な骨組みは完成してしまうのです。

 こころの完成という意味で、5、6才から15、16才ぐらいの間がものすごく重要な意味をもっているのですが、現実にはこの時期に多くのこどもは勉強、勉強、勉強といってこころを豊かにするのではなく、知識、知識、知識といって頭のなかには人間のこころの成長に必要な栄養分をほとんど何もいれることなく、この時期を通りすぎてしまっています。そして、そのことが原因で、いろいろな社会問題、たとえば、殺人事件、自殺の問題、いじめの問題、ニートの問題だけでなく、誰も予想もつかないような、これまで考えられなかったようなそのようないろいろな新しい問題や事件がつぎつぎに発生しているのです。

 そもそも、この手紙はとてつもなく大きくなってしまった《いじめ》の問題を中心に、《自殺の予防》についてどのようにすればよいか小学生の皆さんといっしょに考えてゆきたかったのです。そして、《自殺》の対策として、どうすれば《こころ》の発達を強力にすすめてゆけばよいかについてみなさんといっしょにかんがえているわけです。

 しかし、小学生の皆さんがご指摘するように、この《いじめ》の問題は対応が緊急なのに、その予防対策が緊急になっていないのが現状なのです。そうです、矛盾しているのです。 特に、《自殺》に対する対策はもっとも緊急を要することがらなのですが、《自殺》を予防するためのもっとも有効な手段は《こころ》を強くすることしかないのです。

 しかも、この《こころ》を強くするには、学校だけでなく、家庭、地域社会、そして国全体で《こころ》の発達をどのようにとりくんでゆかなければならないか、そのことをしっかりかんがえなければならないからなのです。そのためには、小学生の皆さんだけでなく、みなさんのお父さんやお母さん、学校の先生、おともだち、そのほかいろいろなひとびとと、いろいろなことを話しあってゆかなければならないのです。とにかく、《いじめの問題》には特効薬はありません! じみちに、こつこつ、ひとりひとりが自分で自分の《こころ》をじっくり、しっかり、一歩一歩成長させてゆくことがもっとも大切なことだからです。そのためにどうすればいいか、私はこの手紙をみなさんに書いているのです。

《 知恵について 》
 《こころ》がどのように発達するか、みなさんと一緒に考えてきました。みなさん、みなさんは大人のような未熟な《こころ》のもちぬしにはならないで、みなさんのころから《こころ》を大切に育ててください。《こころ》を豊かにさせることは一生の大問題なのですから。ほんとうです。このことはとても大切なことなので復習します。

 《こころ》の発達の第一段階 (こころの発生) 素直なこころをもつこと        

 《こころ》の発達の第二段階 (こころの成長) 知識ではなく、知恵をつけること

 《こころ》の発達の第三段階 (こころの完成) 悩み、苦しみ、深く考えること

 さて、おとなは大人とこどもを分けて考えています。でも、わたくしはそのようなことはしません。なぜなら人間に大人も子供もかわりはないからなのです。いいことは大人でもこどもでもいいことですが、悪いことは大人でも子供でも悪いことなのです。そういうわけで、これから大切なことをお話しします。ここでは、《いじめの問題》とはちがった問題がいっぱいでてきます。けれど、それらの問題はやはり《いじめ》と関係しているのです。

 さて、わたしたちは人間としてこの地球という星の上に生命を受けて今ここで生活しています。いったい、これはどういうことなのでしょうか? いろいろな答えが考えられそうですね。それで、わたしはつぎのように答えました。大人も子供も私たちはみんな”動物”なんです。わたしたちはすべて動物なんです。しかも、この地球上でもっともおろかな動物なんです。 みなさんも、わたしも、どちらもとてもおろかな動物なんです。この地球にはバクテリアをはじめさまざまな生物がたくさん棲んでいます。そして、すべての生物はりっぱに生きています。動物だって、植物だって、みんなちゃんと生きています。どうわで悪者にされてる動物だって、ほんとうはすべてりっぱに生きているんです。 ところが、人間はことばがしゃべれるというただそれだけのことでなんだか地球で一番えらい動物であるかのようにさっかくしています。みなさんは、人間がどうぶつのなかでいちばんだめな動物だと思っていますか? たぶん、みなさんの先生だって人間がいちばんおろかな動物だなんて思ってもみないんじゃないかしら? ちょっと考えてみてください。

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